文章の読解の支援
文・短い文章の読解が苦手な事例
H君:文からの情報取り出しのレベルの困難
 H君は、小学4年生です。友だちとのつきあいが苦手です。ひらがな文は流暢に音読できます。
 少し長い文章を読んでもらい、そのあとで、話の筋について話してもらいました。始めのほうの段落ではうまく話せましたが、途中の段落になると困難になりました。
 日本語では、一つ一つの文に主語が明示されていません。そのため、H君は、「だれが、だれに、どうする」という情報を、うまく段落から取り出すことが難しいようです。


困難の背景
 LD児では、単語の意味を理解することが可能でも、しばしば、複数の文からなる文章を呈示されると、うまく意味を読みとれない子どもがいます。複数の文から意味を読みとるということは、複数の文が持っている共通的な情報を取り出すと、言い換えることができます。
 共通的情報に着目し、それを取り出し、ことばで表現するというプロセスは、文章のテーマや主題を自発的に作り出す(生成する)ということにも関連します。
 文章は、複数の文から成り立っています。日本語では、主語が明示されていない文が使われます。複数の文は、また、様々なまとまりを形成し、共通的情報をもたらします。「はじめに」「次に」「さいごに」というような話の順序に関する情報の場合もあります。また、「こわい気持ち」など感情に関する共通的情報を持つ文もあります。
 子どもたちは、共通的な情報を取り出し、その情報をことばで表現することが難しいという知見が知られています。

図5 テキストの局所的理解に関するプロセス


学習支援の視点
 複数の文から共通的な情報を意図的に取り出すことを、長い文章で行うことは、あまり効果的ではありません。はじめに、文レベルや短い文章で指導し、そのことが文章の読み取りにつながることを経験します。
 文や短い文章で、共通的な情報を取り出す方法として、プレトレーニングは効果的な課題です。
 プレトレーニングでは、共通的な情報に従って、言葉カードを分類することを指導します。共通的な情報に基づいて分類することは、「だれが」「どうする」気持ちのことば、接続詞などの、情報の利用につながります。
 プレトレーニングの後に、ゲームを利用した遊び活動を行い、読解に必要な情報の取り出しを指導します。

長い文章の読解が苦手な事例
I君:文章全体の要旨把握のレベルの困難
 I君は、小学6年生です。友だちとのつきあいは得意です。ひらがな文は流暢に音読できます。
 少し長い説明文を読んでもらい、そのあとで、話の筋について話してもらいました。「火山のでき方」についての説明文でしたが、I君の話からは、文章が何を説明しようとしているのかが伝わってきません。特に、文章に直接書かれていないことについては、簡単なことがらでも、うまく推測することが苦手なようです。
 説明文にはいくつかタイプがありますが、I君がそのことに気づくと、もっとうまく話せるようになると思います。

困難の背景
 LD児では、文や短い文章を理解することが可能でも、文章の構造に即して理解することが難しい子どもがいます。文章には構造があります。長い文章を読みとる時には、文章構造を意識しながら、読んでいきます。文章構造についての知識が十分でない子どもがいます。また、文章から情報を整理し、構造を作り出すことが難しい子どもがいます。ワーキングメモリの弱さが、読解の困難にも関係します。

学習支援の視点
 LD児では、様々な原因(語彙の少なさ、ワーキングメモリの制約など)によって、長い文章の読解に取り組む経験が少ない子どもがいます。このような経験の少なさは、文章構造を分かりやすくするために、情報を整理するという、意図的な行動の形成を妨げます。
 情報を整理するという意図的な行動を形成するためには、行動のプランニングとその成功を経験するという指導が効果的です。子どもにとって取り組みやすい活動の中で、長い文章読解にチャレンジし、その中で、文章構造を整理するスキルを習得し、読解できることを経験することが大切です。
 情報を整理するという心理的活動を、カードを分類するという具体的な活動に基づいて、友達と共に展開します。友達と会話することは、子どもが考えることの助けになります。その後に、文章読解を行い、心理的活動としての内面化を図ります(図6)。

図6